今回は、近年注目されている自己肯定感について考えてみたいと思います。
自己肯定感は様々な意味を含みますが、大きく2つの意味が考えられます。

「何かができる」という意味の自己有能感等に近いものと、その人の良い所も悪い所も含めた、弱点を含んだものです。


私の子供時代は、算数に泣いた日々でした。九九がなかなか覚えられず、分数も?で、文章題も苦手でした。

子どもの私は、「算数ができる」という感覚は持ちにくかったと思います。

一方で、九九を覚えるために歌を用い、分数を理解するために親に助けを求め、文章題は、絵を描いてみました。この経験が今生きています。できない自分も認めつつ、良い所も含んだ自己肯定感かと思います。


ある研究で、学習に関わる有能感は全体として学年が上がるほど下がっていく傾向があり、自尊心も同じ傾向が認められました。

ゆえに、学習と自己肯定感(自尊心)は、何らかの関係があると見てよいと考えられると思います。

自己肯定感が下がる理由としては、自分は何でもできると思う幼児期に比べ、客観的に自分を見る目も育つ側面と、課題自体が難しくなっている点が挙げられます。


故に、周囲は子供の長所を見る、他人と比較しない姿勢が重要となるでしょう。
加えて、練習は好きか?諦めず工夫していくか?助けを求められるか?
といった、子供自身が勉強を通して知る自己や世の中を知っていく過程こそが、
学習の本当の意味だと私は思っています。


※参考文献
無藤隆・岡本祐子・大坪治彦 (2006) 
『やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる発達心理学』p.94-95、ミネルヴァ書房
※自己有能感…自分には能力があると信じている感情のこと

ベルアージュ 公認心理師 藤田 典子