これまで、様々な疾患によって、ことば(話しことば、書きことばなど)でコミュニケーションが取りにくくなった多くの人たちに接してきました。

機能訓練によって改善する場合もあれば、残存能力を活かして新しいコミュニケーション方法を獲得しなければならない場合もあります。

コミュニケーションは相互作用的な情報伝達であり、話し手と聞き手が存在して、その役割が交代もします。

実際のコミュニケーション場面において話し手の発話は、イントネーション(抑揚)・リズム(速さ)・ポーズ(間)・プロミネンス(強調)などの超分節的要素を自然に加えます。さらに、声質の変化・顔の表情・しぐさなどもその話しことばに付随させます。

このようにパラ言語は、様々な会話(文脈)の中で意思伝達の重要な役割を果たしていると言えます。

大脳の損傷によって言語機能が障害される失語症の人にとって、ことば以外の意思伝達手段によっても家族と気持ちが通じ合えるのでしょう。

自発語が少なかったり、内容が限定的であり同じことばを繰り返す。といった状況を見かけますが、

その自発的なことばでの”質問ー応答”により見通しが立ち、落ち着くことができるということがあるにせよ、それは本人のコミュニケーション意欲に繋がると捉えてよいのではないかと思います。

短いことばの中にも超分節的特徴が隠れており、我々が気付かないだけかもしれません。

また、本人が望む応答ができていないのかもしれません。

顔の表情や仕草などに注意を払うのと同様に、超分節的特徴を洞察したいと思います。

ベルアージュ 言語聴覚士 正原 勇治