子どもの充実した生活と相関関係にある自尊感情・自己肯定感


ある中学校で1年生から3年生まで面談を通して10点満点で自分を評価してもらったことがあります。ほとんどの生徒が6~8点を付けたのですが、少数ながら2~4点と低い点数を付けた生徒もいました。そして低い点数をつけた生徒全員が成績が伸びていない、クラスで孤立しているといった悩みを抱えていました。
子どもの充実した生活には自尊感情、あるいは自己肯定感が非常に大切です。これは「出来る・出来ない」にだけ結びついているわけではありません。
それ以外にも人間関係、特に家族との関係も影響を受けます。
成功や失敗を繰り返しながら子どもがストレスの多い学校生活や登校の不安を乗り越えていくのはこのしっかり育った自己肯定感が源泉となります。
育児で基本的に大切になるのは、親(特に母親)から受ける愛情(愛着)によって育つ子どもの万能感(何でもできる)や信頼感などの感覚ではないでしょうか。その後のしつけはそれを基礎としています。

我慢させたり押さえつけたりするしつけは、積極性・自発性を育てることにつながらない


子どもにとってしつけは時に苦痛であり、欲求不満や失望を必ず経験していきますが、親や身近な家族に受け入れられている、歓迎されているとの感覚があれば乗り越えていけます。
幼い時にしっかりしつけておきたいとの考え方もありますが、われわれの経験からは早くから我慢させたり押さえつけたりするしつけは、積極性・自発性を育てることにつながらないことが見えてきました。幼児期に禁止的・抑制的であるより、自由に思う存分に育て、ときにわがままで親が手綱を引き締めたくなることもやむを得ないという立場です。
子どもがいきいきと振る舞い、親を心から信じて決して裏切られないという固い信念を定着させることがまず必要だという考え方です。
生まれつきの特性で新しい環境への慣れとか、活動性など子どもに個人差はありますが、いずれにしても基本的には「自分を好き」であるということが何よりも大切なのです。
子どもに対して、仮に社会的場面で自己中心的な行動をとって周りのひとを不快にさせたり、混乱させたりすることがあれば、しつけを通して自分の行動を反省させることは必要ですが、それは自分を恥じることとは別のことです。自分を恥じることは容易に自己嫌悪につながります。
例えば、算数の苦手な生徒が算数嫌いになったとしても、算数嫌いな自分を恥じたり容易に自己評価を低くすることは避けたいのです。勉強はできないが自分自身を大好きであれば、子どもはいきいきとしています。
特に、人間関係で友だちが少ないことで自分の評価を低くしたり自己嫌悪にならないように家族は対応したいものです。
もし子どもが「勉強ができること」「友だちと楽しく交わること」が何よりも大切だと思っているとしたら、それができていないと自分を好きにはなりにくいでしょう。
子どもが自分をどう思っているかは親がその子どもをどう思っているのかと切り離せないように思います。
「寄り添う子育て」とは、子どもが自分を強く恥じない、自分を好きになる子育てと言ってもいいかも知れません。

スクールカウンセラー 海塚敏郎