長期の休みと生活、学習とのつながり


夏休みはいかがでしたでしょうか。
長期の休暇で家族の皆様もいつもと違った生活で学期中とは違う経験をされたかもしれません。
今回は長期休みと子どもの生活や学習とのつながりについての内容になります。

(1)夏休みを振り返るときの子どもへの理解について
夏休みは長期の休みであり、生活のパターンはもちろん学期中と違います。
学期中と違って当然であり同じようにすることは無理ですし、別の生活パターンを作れば、むしろ9月からの生活に混乱をきたしかねません。
つまり、いつの時でも子どもの生活の基本的な時間の流れである睡眠と食事に大きな変動があると休み後の生活パターンに戻すとき、子どもにも家族にも無理があるためストレスとなって意識されやすいものです。スクールカウンセラーの経験から、長期休暇明けは学校生活に大きなストレスが感じられて生活や学習の習慣がうまくいかない、また登校渋りが増えたりします。
4月からの学校生活で仲間関係や授業に対して徐々に困難や不安などを強めてきた子どもには休み明けがきついと感じられることがあります。

例えば、すでに長期休暇前に登校を渋る傾向があったり、クラスで苦戦している生徒は夏休みが息抜きの時間であり元気を取り戻す機会となりますが、本児の状況が大きく変わったわけではないため休み中の
経験次第ですが本人に大きな支えとなるものがないとすると、再び学校への態度が復活します。
むしろ、休み中の居心地の良さが学校での居場所の困難さを増大させてしまうことにもなります。

(2)9月の新学期からの子どもへの向き合い方
①どうして学校が楽しくなくなったのか。その対処は。
②学習の取り組みがうまくいかなくなったのはどうしてか。その対処は。
の2点に絞られます。大切なことは、困難を引き起こした事柄を
挙げるだけではなく、それに対してどう対処すればいいのか。
どうすれば登校を含めて学校生活の困難感が改善できるのかを考えることです。
子どもの発達・成長を願うときのヒントとして確かな根拠に
基づき、実践的に検証されたものをご紹介します。

うまくいく対人関係の基本には
①自分の大切な人(親、教師、友だち)に対して“その人が好きである。
味方だ”という実感、そしてその人から“好かれている、大切にされている”という感覚的実感があります。これはそのまま子どもの「自発性」や「主体性」の源泉になります。皆さんがよく言われる「自己肯定感」にも深く関連しています。
大切なことはこうした気持ちは感覚的な経験が基礎にあるということです。
ですから、言葉でほめたり、ご褒美としてモノをもらわなくてもいい。
子どもが相手から行動を通してメッセージとして体験してくれればいいのです。
興味深いのは、子どもがそうしたメッセージを受け取る相手もその子どもを本当に“好きだ”と感じていることです。

言い換えれば双方(親子、講師―生徒、仲間同士)が気持ちを“共有している”わけです。
大人の場合、親も教員も大人として子どもを育てるあるいはしつけるため、当然叱ることもあるし、怒りを示すこともありますしこれらは必要なことです。

しかし、好きで、信頼していて、味方だと思っている大人からの叱りも怒りもそれはいわゆるPTSDのような大きな心の傷にはならないのです。
教育場面でよく出会うのは「怖い先生」だけど「好きな先生」は結構います。
「自分のことを考えてくれている」というメッセージが生徒に届いているからでしょう。
その場合、その先生もその生徒が大好き(人間として)であることが珍しくありません。
ある中学校の校長先生からお聞きしたのですが、
優れた生徒指導のできる先生はとても貴重だけれども極めて少数と嘆かれていました。
甘やかすだけでもダメ、厳しいだけでもダメ。
その生徒の良いところを心底認めているし、生徒もその先生を信頼している。
そこにあるのは生徒の心を敏感に受け止め大切にしている教員と生徒との絆のようなものでしょうか。
これは今いろいろと取り沙汰されている学校問題の「予防」として注目されています。
そして、すべての児童生徒が対象になります。
改めて申し上げれば、こうした考え方は私たちのスクールカウンセリングの領域では根拠のある重要なこととして取り上げられているのです。

スクールカウンセラー 海塚敏郎