今回ご紹介したいのは、「重要な他者」という概念です。

心理学では、この重要な他者を非常に重視します。それは、子どもたちが育つ上で、この世界のことを「安心できる」と思って成長するか否かの指標となるためです。

一般的にこの子どもたちを取り巻く重要人物として、最初に思い浮かぶのが、親をはじめとする保護者であると思います。

けれども、必ずしも親である必要はありません。

前回ご紹介した本の中で、読み書き困難があった著者の心の支えとなったのは、小学校の担任でした。また、有名人では黒柳徹子さんの言葉が印象的です。

恩師は「君は、本当はいい子なんだよ」といつも声をかけてくれていたといいます。

海外では現在もパーキンソン病と戦っているマイケル・J・フォックスさんが、なぜ精力的に活動しているか研究したものがあり、いつも勇気づけてくれる祖母の存在があったといいます。子どもの成長に、最も強く影響を与える人物が、子どもの事をどのように思って声掛けをしているか、それこそが、非常に大切だと言われています。

つまり、子どもたちは、重要な他者の価値基準を自分のものとして捉える傾向があるという事です。

以上の事から、その重要な他者が、世界を「怖いもの」「あなたはダメだ」と捉えているか、反対に「何とかなる」「この子はよくやっている」と考えるかで、子どもの見え方は違ってくるはずです。子どもたちのよいサポーターになれたらと思います。

※研究について参考文献

杉山崇『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』p.82-85、主婦の友社、2018

ベルアージュ 公認心理師 藤田 典子