①寄稿にあたって

私はこれまで障害福祉分野で30年以上知的発達障害、視覚障害のある人たちに関わってきました。

現在は、障害者支援施設の施設長をしています。

施設では知的発達障害、身体障害、精神障害のある40名(30代から80代まで、平均年齢65歳、強度行動障害加算対象15名、車いす使用4名の利用者)が生活されています。

利用者の生活を支援していく中で感じていること、地域での生活から施設での生活(施設での生活に限らず、地域での生活を続けていくために)の中で本人は勿論、家族や支援者はどのようなことに着目していくのかをライフステージに沿ってお話ししようと思います。

時には親御さんにとって少し厳しいことも書くかもしれません。

しかし、必要なことは、本人が育ち、成長し、自立(自律)し、
生活していくことだと思います。

さて、発達障害は「発達に障害があるため、社会適応の問題が生じること」
「通常、成人期に達しても適応の障害が持続する」というものです。

少しわかりやすくすると、他の子がやることを「やらない」障害とほかの子がやらないことを「やる」障害、「目に見えない」障害があります。

ただ、これにはいくつかの理由が考えられ、「やらない」障害には、やりたくない・やるべきだと気づいていない・やりたいけどできない・能力的にできないということが考えられますし、「やる」障害は、やってはいけないと気づいていない・やらなくてもいいけどやる・ほかの子にはできないことができるなどが考えられます。

興味はないけど仕方なくやっている、やりたくないけどイヤだと言えずにやっている、わかっていないけど他の人のまねをしてやっているなど、一見すると他の人と同じように振舞っているのに他の人が考えないことを考えている、という「目に見えない」障害もあります。

そして、親御さんが気になるのは「やらない障害>やる障害>目に見えない障害」、先生や支援者が気になるのは「やる障害>やらない障害>目に見えない障害」で、見逃され手遅れになりやすいのは「目に見えない」障害です。

例えば、友達にごっこ遊びを誘われるのが嫌、驚かされたりするのが嫌、粘土の匂いが嫌、何かをしているときに邪魔されるのが嫌、昔のことをいっぱい覚えていて今のことをわすれてしまう、ぐるぐるした道やスピードが出ると頭が痛くなる、人の口に触れたものは触りたくないなど、言われればそうかもしれないと思うようなことも目に見えないので親や支援者にはなぜやったりやらなかったりするのかがわかりません。

だからと言って、やらなかったことややりすぎたりすること、見えないものを言語化させたりするために“特訓”する必要はありません。

本人の意欲を育てる「特有の興味のツボ」を押さえることが大切です。

ご家族、支援者(福祉)、教育、医療などが協力して、本人の「興味のツボ」を探し押さえることができると楽しいことが起こりそうですよね。

介護福祉の資格スクール・ホリスケアアカデミー      
同行援護・強度行動障害支援者養成研修講師 宇田 辰彦