思春期(中学校卒業まで)の子どもとのつき合い方
1.発達の見方
小学校後半(小学校4.5 .6年生)はいわゆる思春期という発達期に入ります(女子の方が1.2年
早く入ります)。
身体的・精神的な成長の変化が著しくなります。
身体的変化が明らかになる前から心の在り方はそれまでの様子とは変わって、不安的になりやすく内省的
になります。
思考的には現実世界では触れることができないけれども想像できるもの、イメージできるものがいきいき
と存在感を増してきます。
特に中学生時代になると、心の中で仮定して思考して悩んだり、得意になったり結論を出したりして
互いに議論することもできるようになります。
これは相手の立場に立ったり、自分や相手だけでなく第三者の視点になって考えたり判断したりする
こともできるようになることを示しています(社会性の中核となります)。
仲間関係はますます少数化、緊密化が進み、仲間内でのルールや絆が濃密になる反面、親子や家族の
関係は甘えや自律の間で揺れ幅が大きくなり悩みの種になることもよく見られます。
子どもの生来の気質や個性を土台にして活動性、順応性、情緒性などに個人差が目立ってきて人間関係も
重くなり、強い自意識を育てる機会にもなります。
仲間の集団圧や個性のぶつかり合いによる葛藤、累積する学習内容の増大化と高度化は顕著になり、集団内でのからかい・いじめやコミュニケーショントラブル、集団からの逃避、登校渋り、学習意欲の強い低下が多くなります。
とりわけこれらのことが中学生になって急増します。
いわゆる中1,中2問題はこの時期の心身の発達的変化、学校生活の複雑化に関連します。
スクールカウンセラーは先送りせず、この時点で家族や教育現場と協力して重症化しないよう予防的に支援することを始めます。
学習面では思考力の成熟とともに、学習への能動的参加、自発性・主体性を促すことがますます重要に
なりますが、小学校後半では思考力と共に体験学習、自主的学習、グループ学習の併用がこれまで以上に
重視され、これが中学校での学習の基礎付けとなります。
保護者の方は「したか・しなかったか」の学習の結果以上に、「どんな風にしたか」の学習のプロセスを重視して、学習の「進歩をスモールステップ化してほめる、「考える力・判断する力・自制する力」をほめることが大切になると思います。
2.うまくいかない時に
この時期は得意になることもあれば失望や挫折を感じることも増えその格差は大きくなります。
先に述べましたが、誇りや劣等感が強く体験され、時に耐えがたいほど苦しい場合もあります。
その時にスクールカウンセラーに相談に来ることもありますが、そのソフトサインを家族や教員や仲間に匂わすこともあります。
子どもが深く傷ついて弱っているとき、とりあえず叱咤激励型の励ましは棚に上げて、まず最初に
まわりの大人(保護者、教員、スクールカウンセラー等)は子どもの心に耳を傾け(傾聴)、理解しよう
とする態度(受容、共感)をもって接します。
そして大人の価値観や経験値で子どもを説得や指導することを控えます。
そして、その後に子どもとの絆や信頼関係がしっかりできるにつれて、当面の問題点やつらい出来事への
対応について具体的な対処法を子どもと一緒に考えるようにします。
この小学校高学年からの思春期はその後の進学や就労に向けての準備期間となります。
スクールカウンセラー 海塚敏郎