子どもの特質と対応

心理学に「適正処遇交互作用」という言葉があります。これは子どもの特質は個人差としてそれぞれ生まれつき持っているもので、育てられ方の結果ではないということです。例えば、感受性(反応の強さや感覚の鋭敏さ)、睡眠と覚醒のリズム、食欲、新しい場面への慣れ等です。これらは育児の結果ではありません。そして厳密ではありませんが、大まかにそれぞれ子どもの特質に応じて対応する必要が出てくると考えられます。

つまり、子どものそれぞれにあった適切な対応(例えば育児)がその成長を適切に促していくというものです。しかしこれは言うは易しで、簡単ではありません。

と言うのも、親の方も生まれつき持っている特質と加えて生活から学んだものがあるため、子どもの特質に簡単に合わせるのが難しい場合も出てきます。活発な赤ちゃんと落ち着いた生活をしたい母親の組み合わせなど、いわゆる親子の相性のようなものでしっくりこない場合も出てきます。それでも親子の長い相互作用の中でたいていうまく組み合わさっていきますが。

生れた時からある程度子どもの個人差として現れて来るこの特質は、周囲の対応に微妙に影響していきます(育児のパターンなど)。例えばきょうだいでも特質が変われば育児も違ってくるでしょう。

もし同じ育児を続ければ、きょうだいによっては異なる結果が出てくるということです。特に不安や恐れ、対人緊張を生むことになりかねません。例えば、きょうだいに感覚過敏の子どもがいる場合では特別にその子への特別の配慮が必要になりますし、私の専門領域の発達障害に関して言えばきょうだいに自閉症児がいれば、育児はかなり複雑になります。

私は教育領域でスクールカウンセラーとして臨床心理学の立場から保護者面接の仕事をして、しばしば思うことは子どもの具体的な対応には平等ということと人権ということの二階建ての対応が必要になるということです。

しかも家族全員がその考え方を共有する必要があるのです。

スクールカウンセラー 海塚敏郎