登校を渋る子どもの理解と対応
学校に行きたくない子どもがこの1年でまた増えていて、義務教育段階で年間に約34 万人の不登校の
子どもがいます。
これまで行政も教育関係者も何とかこの現状を改善しようとしてきましたが、残念ながら状況は悪く
なっています。
結果論から言えば、これまでの対応にどこか決定的に見落としていることがあるのではないかと反省的に
見直すことも必要かもしれません。
スクールカウンセラーとしての立場から見た気づきを以下に述べます。
まず最初に知っておかなければならないことは、子どもは学校に行きたい。
学校で学び、友だちと遊びたいと思っていることです。
しかし、学校に行きたいけど行けないというところに苦しさがあります。
登校渋りのこの二面性を理解しておかないと適切な対応ができないでしょう。
そのうえで当然のことですが、学校嫌いには原因があります。
しかも一つではなく複合的なものでしょう。
よくあげられるのは、いじめやからかい、学習場面での不安、恥、怒りの体験、教員の指導力、学習内容の困難性、クラスでの友だち関係などです。
加えて、こうした嫌な体験を発散したり、緩和したり、補ったりする充実感や嬉しく楽しい授業体験、求める友だち体験がうまくいかない。
ただお分かりのように、残念ながらこうしたことは学校ではどの生徒も程度の差はあるでしょうが少なからず体験します。
ではどうして登校を渋る子どもとそうならない子どもに分かれるのでしょうか。
そこでまず第一に注目する必要があるのは、学校での嫌な体験(極端な場合はトラウマとして残るような体験)が有ったか無かったかではなく、それが当事者の生徒にとってどの程度のものだったかということではないでしょうか。
スクールカウンセラーをしていると生徒の悩みや苦しみの内容はめったに起こらないものではないけれども、通常とは違ってその激しさ、深さに気づかされます。
似たような体験をしても受け止め方は個々の生徒によって大きく異なります。
それは生徒の個性あるいは気質とも、多様性とも言えるかもしれません。
最近よく言われる感覚過敏(HSC (Highly Sensitive Child))な生徒、もっと言えば発達に特徴のある生徒(いわゆるASD,ADHD と言われる生徒)は反応が変わって目立つことが多い。
そして、友だち関係でも苦しんでいます。教員にも保護者の方にも気づいてほしいのですが、学校生活や家庭生活の出来事を表面から見ただけでは子ども(生徒)の困惑や苦しみはよく分からないのではないでしょうか。
結果的に、周囲の大人の対応が当事者の子ども(生徒)にとって最適、有効なものにならないこともあるのではないでしょうか。
「こんなことは誰も子どものときは経験するものだ」
「こんな事でへこたれてはだめだぞ」
「努力すればできる」
「がんばれ」
「もっと集中しなさい」
「もっとできるはずだぞ」等々の叱咤激励のことばは、もちろん役に立つ場合もありますが、いつもあるいはどの子どもにも適切なものとは限らない気がします。
家庭では、学校が楽しくなく勉強の意欲が低く自信が育っていない子どもには日常生活で楽しい体験が楽しくない体験より多くなるよう折に触れて、子どもが自分を幸せに思ったり、リラックスしたり、充実した場面や触れ合いの体験をさせることも重要である気がします。
このプラスの体験はつらい体験を耐える力(耐性力と言います)を育てるでしょう。
もう一つ大切なことで「子どもの意欲をどのように育てるか」は、別の機会にお話しできればと思います。
スクールカウンセラー 海塚敏郎