リハビリテーション(学習)における今後の目標は、学力と学業的技能(読字,書字, 計算など)を支える認知機能(音韻意識, 聴覚情報処理, 音声言語の理解と表現, 語彙, ワーキングメモリー, 視機能, 視知覚・視覚認知, 協調運動など)のアセスメントから個人内差(弱み・強み)を把握して、その認知特性に合わせた支援・指導が必要と考えています。


上図は言語情報処理モデルの模式図ですが、「読む」のプロセスでは、視覚情報の取り込み→ 文字・単語の音声化(文字⇒音変換, まとまり読み)→ 文・文章の意味理解のように処理が行われます。

視感覚や視機能の弱さ, 音韻認識の弱さ, 語彙力の弱さ, 聴覚的ワーキングメモリの弱さ, 視覚情報⇒音の変換スピードの遅さなどが読みのつまずきの原因となります。


「書く(単語聴写)」のプロセスでは、聴覚情報の取り込み→ 文字・単語の処理(音⇒文字変換, 意味⇒単語処理)→ 形の構成→ 書字運動のように処理が行われます。

視知覚・視覚認知(線種, 色, 形, 見ているものの空間的位置)の弱さ, 語彙力の弱さ, 視覚的ワーキングメモリの弱さ, 発達性協調運動障害(DCD)の合併などが書字の障害の原因となります。

運筆は、正しい姿勢の保持, 右手と左手の協応動作, 手指の運動
発達(分離運動), 目と手の協応, 衝動性の抑制などが必要となります。

また、協調運動と感覚は密接に関係しており体性感覚である触覚および筋肉・関節など内部を感じる固有覚に弱さがあると「強く書きなさい」などと指示をしても本人はどうしてよいのか分からなくなるということが生じるかもしれません。

「何回も書きなさい」「手本をよく見て書きなさい」「なぞって書きなさい」などの伝統的な指導は、感覚・運動が弱い子どもに対しては効果が小さいかもしれません。

[1][2][3]支援・指導のビジョンは、上図の入力側の情報が入りにくい、また出力側の理解したことや考えたことを表出しにくいという場合には弱い力を補完(アナログ式と電子機器)して学習効率を高める。語彙, 知識, 思考力などは今持っている力を指導のなかで伸ばすというようなイメージです。

「子どもたちは本当に努力や練習が足りていないのか?」と自分自身にフィード
バック!と心に留めておきます。

参考文献
[1] 若宮英司. 子どもの学びと向き合う医療スタッフのためのLD 診療・支援入門, 診断と治療社, 2018, 55p.
[2] 竹下盛, 学習指導に導入するICT について理解しよう, オンライン講座.
[3] 奥村智人. 読み書きのプロセスの理解と見る力が弱い子どもへの支援, オンライン講座.

ベルアージュ 言語聴覚士 正原 勇治