子どもとの付き合い方(2)

臨床心理士(スクールカウンセラー)が子どもの(生徒)と付き合うときの原則は、三つあります。これは育児にも部分的に関連すると思います。

①価値観にとらわれない
②子どもの<心>と<行動>を分けて考える
③子どもにみずから<気づく>ことを重視する
です。

これはスクールカウンセラーという専門職の仕事に関することですから、子育てはこれとは違います。スクールカウンセラーも家族(子ども)を持つこともあるわけで、その時の親としての振る舞いはかなり違います。

皆さんと同様の経験や思いをします。私自身も親として決して自慢できるものではなく、反省のオンパレードです。しかし折につけ、自分の親としての振る舞いを意識的に振り返り、上の臨床心理士の心得は参考になります。

スクールカウンセラーは社会人としての倫理観は持ちながら、特定の価値観にとらわれなくても、親はそうはいきません。育児そのものが親の価値感を子どもに伝えることを含んでいるからです。

家庭、学校、社会での出来事の観方、行動の仕方など、わが子に人として守らなければならないことを(大切なこと、正義)を伝えるでしょう。でも、がんじがらめに価値観を押し付けることは、特に12歳ころからの思春期にある子どもには難しいかもしれません。

これは次の子どもの<心>と<行動>を分けて考えることと関連します。

子どもが怒り心頭で「あいつを殺してやる」と言ったとしてもスクールカウンセラーはそれを咎めたり、叱ったりすることに慎重です。

おそらく、その怒りの心を丁寧に聴くでしょう(これは③の子ども自身の気付きを促すことに結びつきます)。ただ親はそうはいきません。

多くの場合、その心を懸念し、心配したり、正そうとするでしょう。基本的に躾をするわけではありませんが、カウンセラーも実際に行動する(相手を傷つけたりする)ことは親と同様に言って聞かせ、正していくと思います。

ただ、スクールカウンセラーが思い留めていることは、極端に言えば、子どもが心の中で思うこと、感じることは誰も簡単には止めることができない、ということです。

説得や体罰を使っても子どもの心を完全に変えることは難しいのではないでしょうか(例外は親と子どものとの間に強い絆、信頼関係があれば、別でしょうが)。

その代わりに、子どもに自分の心をのぞきこみ、気づき、自分で考え、行動するきっかけやヒントを与えることは出来ると思います。これは親やスクールカウンセラー、教員など大人のことば、表情、態度から、仲間、本、ネットなどのメディアとの付き合いを通して実現していくものと思われます。

スクールカウンセラー 海塚敏郎